シーリング材について

建築

皆さんシーリング材と聞いてどんな種類を思い浮かべるだろうか。
シリコン系、変成シリコン系、ポリウレタン系、ポリサルファイド系はよく使用する材料としてすぐに名前があがるだろう。そんな中最近業務でしょっちゅうシリル化アクリレート系を聞くようになったので気になって調べてみた。

シリル化アクリレート系シーリングとは

シリル化アクリレート系シーリング材の特徴について各メーカのHPを見てみると、これまでのシーリング材に比べ耐久性・耐候性・美観性・追従性に優れた材料として紹介されている。
シリコン系にみられる目地周囲への撥水汚染が無く、かつ耐久性・耐候性は変成シリコンより優れシリコン系と同等の性能を有する。

上記の理由から主用途は外装材での使用を主としたシーリング材となる。
実際、セメダインのカタログを見ると用途として、ガラス回り目地・各種カーテンウォール目地・各種外装パネル間目地・各種笠木間目地とある。

少し材料工学的な話をすると、シリル化アクリレート系は、両末端に架橋性の官能基を持つアクリレート(シリル基末端ポリアクリレート(SAポリマー)を主成分とするアクリレート)とのこと。
主鎖骨格であるポリアクリレートが耐熱性、耐候性、耐油性に優れており、それが高性能なシーリング材へ繋がっている。

上記のような特性から比較的古くから開発が試みられていたようだが、既存の重合技術では末端構造制御や両端の官能基配置の制御が難しく、工業的製造には大きなハードルがあったとのこと。

現在、主要メーカーであるセメダインからはEXCELシリーズ、Sunstarからはペンギンシール SA7500が、横浜ゴムも2021年1月からHamatite SC-SA2/EVOMAXとして販売されている。

シリル化アクリレート系シーリング施工実績

まだあまりメジャーではない(というより私が知らなかっただけですが)シリル化アクリレート系シーリングだが、調べてみると実は10年以上前から使用されている。

セメダイン株式会社のHPを調べると、物件名も記載された2009年から施工実績が確認できる。

シリル化アクリレート系シーリングは万能なのか?

各メーカーの材料試験データを見る限りは、万能な次世代シーリング材のように見えるが、デメリットは無いのか個人的に考えてみた。(あくまで下記項目は、個人的な意見である。)

①完全プライマー依存性
言わずもがなシール施工に適切なプライマー塗布が重要であるが、メーカーのカタログを見るとシーリング材の種類によっては自着性を持つものもある。(だからと言って、プライマー施工をおろそかにしていいということではもちろんない)
それに対して、シリル化アクリレート系は完全プライマー依存であるため、プライマー塗布が行われていないと、いかにそれ以外の施工を完璧にしてもいとも簡単にシーリング材は剥離する。
施工エラーを0とするという施工者側の立場では、シール施工に十分な工程・技能工を確保できれば問題ないが、必ずしもそうはならないため1つのリスクとして捉える必要があるだろう。

②施工実績の少なさ
10年近くの施工実績があるとはいえ、他のシーリング材と比較するとまだ10年程度の実績しかないといえる。材料試験上では、何十年再現の耐久性・耐候性を有することが分かっていても実際使用すると想定外の事象で分かる問題点もある。
施工する職人も慣れている材料と慣れていない材料だと施工スピード等差が出ることが予想される。
建築は、経験して初めて分かることも多く、長年の蓄積された実績はやはり重要な要素と言える。

③各種材料との相性
②の施工実績が少ないことにもかかわるが、取合う他のシーリング材や各種材料(例えばガラス中間膜等)との相性で実証済みのものもあれば、実証されていないことも多くある。
採用するにあたり別途相性の確認が必要となると、手間がかかることを嫌い採用が見送られるケースもあるだろう。

シリル化アクリレート系の台頭で消えるシール材あり?

これまでのシリル化アクリレート系の話を聞いていて、ふとこんな疑問を持たないだろうか。
シリル化アクリレート系ってポリイソブチレン系の上位互換じゃないかと。

まさしく、その疑問の通りのようでポリイソブチレン系の接着性や薄層未硬化の問題を各メーカーがクリアしようとしている中での1つの解として出てきたのが、シリル化アクリレート系とのこと。

ポリイソブチレン系も発売当初は次世代の万能シールとして登場したが、シリル化アクリレート系の登場に伴い生産も日本シーリング材工業会のHPを見ると2017年から生産もされていないようだ。

まとめ

今回、シリル化アクリレートについて調べてみたが、私個人の意見としては以下の通りになった。

材料的(設計の立場からは)には、次世代の万能シールと言えそう
施工者側の立場では、これまでのシーリング材に比べリスクもあるため採用時は要検討

色々言いたいことを書いてきたが、これまでのシーリング材の問題点を改善したうえで開発された材料であるため、シリル化アクリレート系シーリング材のこれからの活躍を一技術者として見守りたい。

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