コンクリート技士更新登録研修-2021年度
以前のブログでも触れたが、今年コンクリート技士の更新手続きがあり、e-ラーニング形式で研修を受けることになっている。
8月14日時点でまだ研修はe-ラーニングとしての研修は受けていないが、テキストを先に読んでいて思ったことを今回は取り上げたいと思う。
因みに、私が申し込んだのは2021年8月2日~9月30日までの受講期間で受けるe-ラーニング形式の研修である。
あまり研修内容には関係ないが、研修の受講票の中にある連絡事項で、視聴に当たってブラウザとしてInternet Explorerでは視聴できないとなっており時代は変わったなと感じた。
研修のテキストを読んでいる中で何点か気になったことがあったが、今回特に気になった下記3点を取り上げたい。
- JIS A 5308 改正内容-高強度・超高強度コンクリート
- 土木学会コンクリート標準示方書および関連指針の概要
- JASS5 暑中コンクリートの施工指針・同解説
JIS A 5308 改正内容-高強度コンクリート
JIS A 5308「レディーミクストコンクリート」は2019年3月に改正が行われている。テキストでは改正の目的として、「環境負荷の低減を実現する規格」、「高強度コンクリートの利用推進」、「生産性向上に寄与する規格」が挙げられていた。
その中で、最近現場で使う機会が多くなってきた高強度コンクリートについて気になったので注目してみた。
まず、2019年での高強度コンクリートの種類・区分に関する改定内容を説明する。
高強度コンクリートの呼び強度が1N/mm2間隔で指定出来ることが規定された。具体的に述べると、呼び強度50、55、60の間の整数及び普通コンクリートの呼び強度45を超える46~49の整数を高強度コンクリートの呼び強度とみなせることが規定された。
また、スランプフローについても従来の50cm、60cmに加えて45cmと55cmが新たに設けられている。
ただし、呼び強度の最大値は従来通り60のままとなっている。
上記内容それぞれについて個人的に考えたことを述べたい。
1.高強度コンクリートの種類(呼び強度間隔)
2019年の改定で、高強度コンクリートについては呼び強度が1N/mm2刻みで発注できるようになったが、正直私はここまで細かくする意味があるのかなと考える。設計もコンクリート強度 1N/mm2 でOK、NGの判定が覆るほどシビアにやるとも思えないので、普通コンクリート同様呼び強度は3間隔でも十分対応できるのではないかと思う。
コスト的にも全体ボリュームにもよるが呼び強度が1変わったことでのコストダウンを狙うのであれば、もっと他の箇所で根本的な変更対応をした方が費用対効果出るのかなと感じる。
ただ、選択肢が広がるといった点では歓迎すべき改正だと考えている。
2.スランプロー区分の追加
スランプロー値については、高強度だけでなく普通コンクリートにおいても2種類追加される形になり、これは現在のコンクリートの要求性能の多様化を考えれば施工者側としては非常に意味のある改定ではないかと考えている。
気になるとすれば、生コン工場側としてさらに配合管理の項目が増えて管理上手間となるのか、それともフロー値が増えることにより調合・配合計画上楽になる点があるのか一度プラントの関係者に聞いてみたい。
3.呼び強度最大値
今回の改定でも高強度コンクリートとしての呼び強度の最大値は60で前回同様据え置きとなっている。こちらについては日本建築学会の「鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説」(以下、RC規準)でも具体的な手法が示されているのは60N/mm2以下であることや実際使用されている大半のコンクリート強度を考えると、個人的には妥当かと考えている。
と言いつつも、「高強度コンクリート施工指針(案)・同解説」では120N/mm2まで対象としていることや今後も超高層建物での超高強度コンクリートの使用が見込まれる現状を踏まえて、次回のRC規準大改訂の際には、高強度コンクリート使用での設計についてより踏み込んだ内容になって欲しい。
ついでに超高強度コンクリートについて今回勉強になった点についてさらっと触れたい。
1つ目に超高強度コンクリートの火災時爆裂現状について、粗骨材種類が爆裂に及ぼす影響は認められないとする結果と影響は大きいとする結果両方が研究によっては示されているそうで、自分の頭の中では超高強度コンクリート→爆裂対応必要→粗骨材の種類注意との認識だったので、研究者によって意見が分かれているのは全く知らなかった。
2つ目は、混和剤について超高強度コンクリートで使用される混和剤の中には、非常に減水率が高いためにJIS A 6204の規定から外れるものもあり、JASS 5M-702で、高強度コンクリート用混和剤の性能判定基準を定めていることがある。こちらも、自分の不勉強で全く気にも留めていなかったため、今後色々と深堀したい分野である。
3つ目は、耐久性に関して自己収縮の管理についてがある。こちらについては、一応大学でコンクリート構造を専攻した端くれとして、ひび割れ抑制の検討の中で超高強度コンクリートにおいて乾燥収縮に占める自己収縮の割合が大きいことから 自己収縮の管理が重要であることは理解している。ただ、大学にいた10年以上前の時は、コンクリートの混和剤で膨張材や収縮低減剤を実際の現場で使用するのはまだまだ先の話かなと考えていたが、そろそろ現実的な話まで迫ってきているのかなと感じた。
土木学会コンクリート標準示方書および関連指針の概要
正直こちらの内容については、資料の内容というよりテキストの内容でこんなに土木関連の内容があるのかと感じたとの感想です。
コンクリート技士の更新時の研修は今回で2回目だが、正直前回の研修の内容はほぼ忘れていたため(すみません…)、テキストで40ページ以上も土木での規格・仕様について割かれていたので、こんなにボリュームあったかなーと過去の記憶を探ってしまいました。
しかし、コンクリートはもちろん土木・建築の両方で使用される材料のため、しっかり土木の内容も理解しないといけないと反省しました。
また、本論からは外れるが、低スランプであそこまで綺麗なコンクリートを打つ土木の構造物を見ると本当に感動すると同時に建築畑の自分も負けたくないといつも感じる。
JASS5 暑中コンクリートの施工指針・同解説
今回のテキストでJASS5及び関連指針の項目で、「耐久設計施工指針・同解説」や「プレキャスト複合コンクリート施工指針」など暑中コンクリート以外でも気になる項目はいくつかあったが、ここ数年で特に検討の必要性が高まっていると考えている、暑中コンクリートについて今回特に注目した。
暑中コンクリートの定義についてはまた長くなるので今回は取り上げないが、受け入れ時にコンクリート温度が35℃以下が原則としてあるが、近年の気温を考えると今後徐々に厳しくなってくるのではないかと考える。今回は、詳しい内容は説明しないが、暑中コンクリートの中で勉強になった箇所を取り上げたい。
1.設計段階における暑中対策:酷暑期において、使用するコンクリートの乾燥収縮の目標値を8×10-4以下とする。
正直暑中対策として、具体的に乾燥収縮の目標値が規定されていることは全く知らなかった。上記については、施工時の外気温が高いほど外気温の低下に伴う収縮量が大きくなることが実験値で明らかになっているため、計画供用期間の級に関わらず目標値として設定している。この値は、まだ目標値として設定されているだけだが、今後この値が規定値とされる方向性になれば使用する混和剤や配合計画にも大きく影響するのではないかと考える。
2.打込・締固め時対応
今回の改定で、場内運搬の待ち時間等で許容値以上にスランプが低下した場合の救済措置で下記の対応が挙げられている。
次の①・②を満足する場合混和剤の添加によるスランプ回復が許容される ①練り混ぜ~打込完了まで90分以内、②スランプ回復後のコンクリートが計画時のスランプと空気量を満足すること
これについては、もちろん工事監理者との協議が必要になる項目だが、今後明らかに酷暑期が長くなる傾向にある事を考えると現場側として念頭に入れておく項目だと考える。
まとめ
今回は、コンクリート技士の更新研修の事前予習?で感じた事をつらつらと書いてみた。
色々と気になった点を記載したが、今回も思ったのはコンクリート1つ取っても日々技術的な項目は進展・更新されているため興味を持っていてもなかなかついていくのは大変である。特に日々の仕事に追われていると昔の規準で止まってしまうことが多々ある。だからこそ、こうした研修の機会を貴重な機会とみて最大限利用したいし、そこで気になった点・興味を持った点は自分なりに深堀していきたいものである。
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